torinikugobouのブログ

備忘録的に、ライトな日記綴り。

マナーの話と真夏の方程式

特別お題「心温まるマナーの話」 by JR西日本
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/jrwest

 

今週はどんなお題かな

そう思って見た。

ショックだった。

「子どもがお年寄りに席を譲っていた」「車内で座り込んでいる友達に、注意している学生がいた」――。駅や列車内で、こんな体験をしたことはありませんか?

はてなブログでは、JR西日本と共同で特別お題キャンペーンを実施します。

応募キーワードは、特別お題心温まるマナーの話

これが、はてなJR西日本というふたつの企業の認識なんだ。

「こどもがお年寄りに席をゆずる」「友人を注意する学生」

これが、はてなJR西日本の「心温まるマナー」なんだ。

 

私には、心温まるとも、マナーだとも、思えなかった。

 

映画の話をしよう。映画内容に触れます。

真夏の方程式」。何年か前に公開されていた映画だ。

 

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冒頭しばらくして。

人のまばらな電車内の様子が映し出される。窓際でひとりおにぎりを食べているこども。小学生ぐらいか。

着信する携帯電話。食事の手を休め、電話に出るこども。

かけてきた相手の声は聞こえない。しかし、答えるこどもの言葉と映像から

  1. こどもは、遠くへひとりで旅している途中であること
  2. かけてきたのは保護者で、無事につけるか何か起きていないかと心配をしているため、しつこく確認しこどもに答えさせていること

このふたつがわかる。

こどもは最小限に受け答えをし、急いで電話を切った。

その直後だ。通路をはさんで向こう側の席に座っていた男性が、声をあげる。

「わかっとるんなら、マナーを守らんか」

電車の中は携帯禁止だと告げ、電源を切るよう強くこどもに迫る。

いきなり、他人に、事情も聞かず高圧的な態度をとったのだ。小さなこどもに。

様子を見ていれば、こどもが自分からした行為ではないこと、相手が保護者であることは容易に判断できる。こどもに非は無い。

むしろ、できるかぎり騒音の出ないよう努力していたと褒めていいぐらいだ。

「マナーを守っていない」という決めつけ、そして「自分が思うマナー通りにしろ」という命令。男性は、「みんなが心地よく過ごすための配慮であるマナー」を「絶対服従のルール」とみなしている。

 

こどもは説明する。自分が持っている携帯電話はキッズフォンで、意図的に電源を切ると両親に通知が行くしくみだと。つまり、緊急事態発生とみなされてしまうのだ。

ところが。

男性は激高し、こどもに襲いかかる。携帯電話を奪おうとしたあげく、その勢いで携帯電話を放り投げてしまう。

もう、マナーどころの話ではない。これは、強者による弱者へのいじめだ。

「正義」をふりかざした暴力だ。

相手が「悪」なのだから、何をしても構わないという思考。

しかし、相手は悪ではない。

万人に当てはまるマナーもルールも無いのだ。

こどもの説明を聞けば、その前に状況を見れば、相手にかけるべき言葉と態度は別のものだとわかるだろう。さらに、公的なマナーとこどもの置かれた状況とにどうしたら折り合いをつけられるのか、考えることが必要だということも。

しかし、男性は脅し、暴力を振るうことを選んだ。思考停止のまま、相手を排除することを選んだ。

 

ここで、別の大人が動く。主人公、湯川博士福山雅治)だ。

 

おにぎりを包んであったアルミホイルを手にし、携帯電話を包みだす。

「こうしておけば、電源を切らなくても電話がかかってくることはない。アルミホイルが電波を遮断するからだ」

「これでいいでしょう」

彼は、マナーとこどもの置かれた状況に折り合いをつけた。

誰かを責めることは無かった。

 

冒頭の、お題の話に戻ります。

「席をゆずる」「注意をする」これは、マナーではない。

善意だ。

当たり前のことではない。

配慮だ。

子どもというくくり、学生というくくり、それらを例として出す必要はどこにあるのだろう。

お金を払い、乗車している。みんな平等だ。

 

小さなこどもがお年寄りに席をゆずることが、心温まるとは思えない。小さい彼らこそ、揺れる電車で立っていることは困難だ。つり革に手が届かない。

友達に注意する学生、誰かが誰かを注意する様子を見て、心が温まる人がいるのだろうか。私には、どうしても想像ができない。

 

マナー違反だと冷たい視線を向ける

マナーがいいとほめそやす

 

どちらも、私は違和感がある。

状況把握と提案が欲しい。断罪ではなく、対話でありたい。